インド占星術の本や鑑定で「D9」「ナヴァムシャ」「分割図」という言葉に出会い、急に難しく感じた方は多いのではないでしょうか。
出生図(ホロスコープ)は1枚だと思っていたのに、ジョーティッシュでは同じ出生データから十数枚もの図を作ります。
どれを、どの順番で見ればいいのか迷うのは自然なことです。
結論からお伝えすると、分割図は「メインの出生図(D1)を、テーマごとに拡大して確かめるための虫眼鏡」です。D1を土台にして、結婚ならD9、仕事ならD10というように、問いに合った1枚を重ねて読みます。
この記事では、分割図のしくみ、主要16種の早見表、初心者がまず見るべき3枚、そして実際の読み方を5つのステップで解説します。
- 分割図(ヴァルガ)とは何か・なぜ作るのか
- D1〜D60まで主要16種の分割図と、それぞれが示すテーマ
- 初心者はD1・D9・D10の3枚から始めればよい理由
- 分割図を読む5ステップ(ダシャーとの重ね方まで)
- 出生時刻のズレなど、読む前に知っておきたい注意点
拓海私も最初に分割図の一覧を見たときは、「D60まであるの?」と手が止まりました。
ただ、ITの仕事でいえば「全体のダッシュボード」と「機能ごとの詳細画面」の関係に近いと気づいてから、ぐっと整理しやすくなりました。
全部を同時に見る必要はないので、安心して読み進めてください。
分割図(ヴァルガ・チャート)とは?出生図を「拡大」して読む技法
分割図とは、12星座(ラーシ)それぞれの30度を一定の数で等分し、惑星がどの区画にあるかを並べ直した「派生チャート」のことです。
サンスクリット語でヴァルガ(Varga)と呼ばれ、ジョーティッシュ(インド占星術)を西洋占星術と分ける特徴のひとつとされています。
なお、ジョーティッシュは実際の星の位置を基準にするサイデリアル方式を採るため、西洋占星術(トロピカル方式)と比べて星座が約24度ずれます。
分割図もこのサイデリアルの度数をもとに計算される点を、最初に押さえておきましょう。
【関連記事】西洋占星術とインド占星術の違い5つ|星座がずれる理由と使い分け
「D1」「D9」の数字は何を意味する?
「D」はDivision(分割)の頭文字で、後ろの数字が「1つの星座を何等分するか」を表します。
たとえばD9は30度を9等分(1区画3度20分)、D10は10等分(1区画3度)です。
D1は分割しない元の図で、「ラーシ・チャート」と呼ばれる、いわゆるメインの出生図にあたります。
なぜ1枚の出生図だけでは足りないのか
同じ日に同じ地域で生まれた人は、D1上では惑星の星座がほとんど同じになります。
しかし実際の人生は一人ひとり違います。
分割図は惑星の度数を細かく区切ることで、D1では見えない差を浮かび上がらせ、「結婚」「仕事」「財」など特定のテーマを精密に確かめるために使われてきたと言われています。
ナヴァムシャ(D9)の計算のしくみを一例で確認
しくみを理解するために、もっとも有名なD9の計算ルールを見てみます。
D9では、星座の性質(火・地・風・水)ごとに数え始める星座が決まっています。
| D1の星座のグループ | D9の数え始め | 例:その星座の0°〜3°20’にある惑星 |
|---|---|---|
| 火(牡羊・獅子・射手) | 牡羊座から | D9では牡羊座 |
| 地(牡牛・乙女・山羊) | 山羊座から | D9では山羊座 |
| 風(双子・天秤・水瓶) | 天秤座から | D9では天秤座 |
| 水(蟹・蠍・魚) | 蟹座から | D9では蟹座 |
たとえばD1で獅子座12度にある惑星は、3度20分ごとの4番目の区画(10°〜13°20’)に入るため、牡羊座から4つ数えてD9では蟹座に配置されます。
実際には無料の作成ソフトやWebサービスが自動で計算してくれるので、手計算は「しくみを知るため」と考えて大丈夫です。
【早見表】主要な分割図16種の一覧と見るテーマ


古典『ブリハット・パラーシャラ・ホーラ・シャーストラ』では、主要な16種の分割図(シャダシャ・ヴァルガ)が挙げられています。
それぞれが担当するテーマは次のとおりです。
名称や解釈は流派・訳者によって多少異なるため、目安としてご覧ください。
| 分割図 | 名称 | 1区画の幅 | 主に見るテーマ |
|---|---|---|---|
| D1 | ラーシ | 30° | 人生全体・体と性格・すべての土台 |
| D2 | ホーラ | 15° | 財・お金との付き合い方 |
| D3 | ドレッカナ | 10° | 兄弟姉妹・勇気・行動力 |
| D4 | チャトゥルタムシャ | 7°30′ | 住まい・不動産・幸運 |
| D7 | サプタムシャ | 約4°17′ | 子ども・創造性 |
| D9 | ナヴァムシャ | 3°20′ | 結婚・パートナー・人生後半・惑星の本当の強さ |
| D10 | ダシャムシャ | 3° | 仕事・キャリア・社会的な役割 |
| D12 | ドヴァーダシャムシャ | 2°30′ | 両親・家系 |
| D16 | ショーダシャムシャ | 約1°53′ | 乗り物・快適さ・幸福感 |
| D20 | ヴィムシャムシャ | 1°30′ | 信仰・精神修養 |
| D24 | チャトゥルヴィムシャムシャ | 1°15′ | 学問・教育・知識 |
| D27 | バームシャ | 約1°07′ | 強さと弱さ・持久力 |
| D30 | トリムシャムシャ | 1° | 試練・乗り越えるべき課題 |
| D40 | カヴェーダムシャ | 45′ | 母方から受け継ぐもの |
| D45 | アクシャヴェーダムシャ | 40′ | 父方から受け継ぐもの・品性 |
| D60 | シャシュティアムシャ | 30′ | 過去からのカルマ・全体の総合判断 |
表を見てわかるとおり、数字が大きくなるほど1区画が細かくなります。
細かい図ほど精密ですが、そのぶん出生時刻のわずかなズレで結果が変わりやすくなる点は、後の「注意点」で詳しく触れます。
初心者がまず見るべき分割図は3枚だけ【D1・D9・D10】


16種すべてを読む必要はありません。最初はD1・D9・D10の3枚に絞るのが、もっとも挫折しにくい学び方だと私は考えています。
多くの解説書でも、D1を主に、D9を補助として使うのが基本とされています。
| 図 | 役割のたとえ | こんな問いのときに見る |
|---|---|---|
| D1(ラーシ) | 建物の設計図(全体) | どんな人生の土台を持っているか |
| D9(ナヴァムシャ) | 建物の基礎・内部構造 | 結婚・パートナー、惑星の底力、人生後半の傾向 |
| D10(ダシャムシャ) | オフィスフロアの詳細図 | どんな働き方・役割で力を発揮しやすいか |
D9は「D1の次に重要」とされ、D1で強く見える惑星でもD9で弱ければ力を出し切りにくい、と読まれることがあります。
逆にD1で目立たない惑星がD9で強ければ、年齢とともに伸びてくる資質として受け取ることもできます。



私がキャリアと体調を同時に崩した30代後半、D1だけを見ていた頃は「どうして仕事がこんなに噛み合わないのか」が分かりませんでした。
D10を重ねてみると、10室に関わる惑星の配置が「組織の中で前に出る」より「仕組みを裏で支える」働き方を示しているように読めたんです。
もちろん一つの読み方にすぎませんが、自分を責める気持ちが少し軽くなったのを覚えています。
インド占星術の分割図の見方|読み解きの5ステップ


分割図は「D1で問いを立てる → 分割図で確かめる → ダシャーで時期を重ねる」という順番で読むと、迷子になりません。
ここでは具体的な手順を5つに分けて解説します。
ステップ1:出生時刻を確認し、分割図を作成する
まず母子手帳などで、できるだけ正確な出生時刻を確認します。
そのうえで、ジョーティッシュ対応の作成ソフトやWebサービスに生年月日・時刻・出生地を入力し、アヤナムシャ(星座のずれの補正値)はラーヒリーを選ぶのが一般的です。
D1・D9・D10が並べて表示されるものを選ぶと比較しやすくなります。
ステップ2:D1で「問いに対応するハウス」を確かめる
いきなり分割図を開くのではなく、先にD1で問いに関係するハウス(人生の分野を12に分けた部屋)を見ます。
結婚なら7室、仕事なら10室、財なら2室と11室が代表的です。
D1のラグナ(上昇宮:生まれた瞬間に東の地平線から昇っていた星座)から数えて、そのハウスの星座・在住惑星・支配星を確認しておきましょう。
【関連記事】インド占星術の12ハウスの見方|ラグナから読む4ステップと象意一覧
ステップ3:テーマに合う分割図のラグナと支配星を読む
次に、問いに合った分割図を開きます。
分割図にもそれぞれ独自のラグナがあり、分割図のラグナと、その支配星(ラグナロード)の状態が、そのテーマ全体の基調を表すと読まれます。
あわせて、D1で確認したハウスの支配星が、分割図でどの星座・どのハウスに入っているかを見ていきます。
【関連記事】ラグナロードとは?読み方と意味・12星座別の早見表と読み解き4ステップ
ステップ4:惑星の品位とヴァルゴッタマを照らし合わせる
9つの惑星(グラハ:太陽・月・火星・水星・木星・金星・土星・ラーフ・ケートゥ)が、分割図でどんな状態にあるかを確認します。
代表的なチェックポイントは次の3つです。
- 品位:惑星が高揚(力が最大になる星座)・自室・減衰(力を出しにくい星座)のどれにあるか
- ヴァルゴッタマ:D1とD9で同じ星座にある惑星。安定して力を発揮しやすいとされる
- D1との差:D1で強くD9で弱い/その逆、といったギャップがないか
ここで大切なのは、1つの要素だけで吉凶を決めないことです。
D1と分割図の両方で同じ傾向が出ているときに「読みの確度が高い」と考えるのが、多くの流派に共通する姿勢です。
ステップ5:ダシャーと重ねて「いつ動くか」を読む
最後に、ジョーティッシュ固有の時期論であるダシャーを重ねます。
ダシャーとは、人生をいくつもの期間に区切り、「今はどの惑星が主役の時期か」を示す考え方で、代表的なヴィムショッタリ・ダシャーでは9惑星が合計120年を順に担当します。
今の時期の支配惑星がD9やD10で良い状態にあれば、そのテーマが動きやすい時期として読まれることがあります。
分割図は「何が起こりやすいか」の地図、ダシャーは「いつそこを通るか」の時刻表、と考えるとイメージしやすいかもしれません。
この2つを重ねることで、焦らず準備する時期と、思い切って動く時期を見分けるヒントが得られます。
【関連記事】マハダシャーは何年続く?自分の期間を知る3つの手順
D9(ナヴァムシャ)の見方|結婚・パートナーと人生後半
D9は結婚・パートナーシップを見る図であると同時に、惑星が持つ「本当の底力」を測る図として重視されています。
また、人生の後半に表に出てくる資質を示すとも言われています。
D9でまず確認したい3つのポイント
- D9の7室と7室の支配星:パートナーとの関係性の質や、相手に求めるもの
- 金星と木星の状態:金星は愛情・調和、木星は信頼・導きを表し、結婚運の補助指標とされる
- D9のラグナ:成熟していく内面の方向性、人生後半のテーマ
「D9で弱い=結婚できない」ではない
D9で金星が減衰していると、不安になる方もいるかもしれません。
しかしジョーティッシュには、減衰した惑星の力が回復する条件(ニーチャバンガ)など、読みを補正する技法が数多くあります。
1つの配置だけで結論を出さず、「関係を育てるうえで意識したいテーマ」として受け取るのが建設的です。
D10(ダシャムシャ)の見方|仕事・キャリアの方向性
D10は、社会の中でどんな役割を担い、どう評価されやすいかを読む「キャリア専用の拡大図」です。
転職や独立を考えている方が、もっとも実用的に使える分割図かもしれません。
D10で見るポイントと、象意の例
D10では、D10のラグナ・10室・D1の10室支配星の位置を中心に見ます。
そこに関わる惑星の性質が、力を発揮しやすい働き方のヒントになると考えられています。
| D10で目立つ惑星 | 読まれやすい働き方の傾向(一例) |
|---|---|
| 太陽 | 責任ある立場・公的な役割・リーダーシップ |
| 月 | 人と接する仕事・ケア・大衆向けの分野 |
| 火星 | 技術・現場・競争のある環境 |
| 水星 | 情報・分析・文章・商取引 |
| 木星 | 教育・助言・専門家としての指導 |
| 金星 | 美・デザイン・調和をつくる仕事 |
| 土星 | 継続・組織運営・地道な積み上げ |
| ラーフ/ケートゥ | 新しい分野・海外・専門特化や探求 |
これはあくまで一例で、実際には星座・ハウス・惑星同士の関係を合わせて判断します。
D10の傾向がつかめたら、今のダシャーの支配惑星がD10でどこにいるかを見ると、キャリアが動きやすい時期のヒントになります。
【関連記事】ダシャーで転職に良い時期がわかる|動く年を見極める4ステップ
分割図を読むときの注意点3つ
分割図は精密なぶん、扱い方を誤ると「読み違い」も起きやすい道具です。
読む前に、次の3点を押さえておきましょう。
①出生時刻のズレで分割図のラグナが変わる
ラグナはおよそ4分で1度動くと言われます(星座によって速さは異なります)。
そのためD9のラグナは目安として十数分、D60に至っては数分の差で入れ替わることがあります。
出生時刻が「だいたい」の場合は、細かい分割図ほど参考程度にとどめ、D1とD9を中心に読むのが安全です。
②分割図だけで結論を出さない
分割図はあくまでD1を補強・確認するためのものです。
D1で示されていない出来事を分割図だけから読むことは、多くの流派で避けるべきとされています。
「D1が本体、分割図は拡大鏡」という関係を忘れないようにしましょう。
③計算法や解釈は流派によって異なる
D2(ホーラ)やD30(トリムシャムシャ)などは、パラーシャラ方式以外にも複数の計算法が存在します。
ソフトによって結果が違って見えるのはそのためで、どれが「正解」というより、技法ごとに読みが分かれるものと理解しておくと混乱しません。
また、月が入っている星宿(ナクシャトラ)と組み合わせて読む技法もありますが、ナクシャトラ(27宿)については姉妹サイト「宿縁ノート」で詳しく解説していますので、深く知りたい方はそちらをご覧ください。



私自身、母子手帳の出生時刻が「○時ちょうど」と丸められていて、D60の結果を真に受けて混乱したことがあります。
エンジニア的に言えば、入力データの精度を超えた出力は信用しすぎない、ということですね。
細かい図ほど「仮説」として扱うのが、長く付き合うコツだと感じています。
インド占星術の分割図に関するよくある質問
Q. 分割図は西洋占星術にもありますか?
西洋占星術にも、星座を細かく区切る「デーカン(10度区分)」などの考え方はあります。
ただ、テーマごとに独立したチャートを作って読む体系として発達しているのは、ジョーティッシュの大きな特徴と言えます。
どちらが優れているというより、見ている角度が違うと考えると良いでしょう。
Q. 出生時刻がわからなくても分割図は使えますか?
惑星の星座位置は時刻が多少ずれても大きく変わらないため、D9での惑星の配置はある程度参考になります。
ただし、ラグナを基準にするハウスの読みは不正確になります。
時刻が不明な場合は、月のラーシ(月がある星座)をラグナ代わりにする読み方を併用するのが一般的です。
Q. D1とD9で結果が真逆のときはどちらを信じればいいですか?
D1は「表に見える形」、D9は「内側の底力」と捉え、両方とも正しいと考えるのが基本です。
たとえばD1で強くD9で弱い惑星は、最初は勢いがあっても、後から地道な補強が必要なテーマと読むことができます。
判断に迷う場合は、ダシャーとの関係も含めて専門家に相談すると整理しやすくなります。
Q. 分割図で「悪い配置」が出たら、その分野は諦めるべきですか?
そう考える必要はありません。
吉凶の判断は流派や技法によって大きく異なり、1つの配置で人生が決まるわけではないとされています。
課題を示す配置は、「どこに丁寧さが必要か」を教えてくれる注意書きとして受け取ると、前向きに活かせます。
まとめ|分割図は「時期を知って焦らず動くための地図」の拡大版
分割図は、D1という人生全体の地図を、テーマごとに拡大して確かめるための道具です。
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 分割図(ヴァルガ)は星座の30度を等分して作る派生チャートで、主要なものは16種
- 初心者はD1(全体)・D9(結婚・底力)・D10(仕事)の3枚から始めればよい
- 読む順番は「D1で問いを立てる→分割図で確かめる→ダシャーで時期を重ねる」
- 細かい分割図ほど出生時刻の精度に左右されるため、仮説として扱う
- 吉凶は流派で読みが分かれるので、1つの配置で決めつけない
分割図で「何が起こりやすいか」を知り、ダシャーで「いつ動くか」を重ねると、焦らず準備する時期と動く時期が少しずつ見えてきます。
ただ、出生時刻の精度や複数の図の総合判断には経験が必要なため、自分だけで読み切れないと感じたら、ジョーティッシュに詳しい専門家に一度見てもらうのも一つの方法です。



私が立ち止まっていた時期に救われたのは、「今は根を張る時期で、動くのはもう少し先」と時期の構造で捉え直せたことでした。
分割図とダシャーを重ねた読みは、独学だとどうしても迷いが出ます。
今の自分がどの時期にいるのか気になる方は、専門家に出生図とダシャーを一緒に見てもらうと、次の一歩がずっと考えやすくなると思います。








